『そしたら「未依のためにありがとう。これからもよろしく頼む」って頭を下げられて、私も師長もビックリよ。それに加えてこの前の病棟での騒動でしょ? あの時も神崎さん、じゃないや、須藤さんに手を出されてめちゃくちゃキレてたもん、これは溺愛してるって確信したわ』

今後は目立った嫌がらせはなくなるだろうけれど、もしなにかあればすぐに相談するようにと言ってもらえ、未依は照れくさく感じるとともに改めて恵まれた環境にありがたみを感じる。

食事会の後半はアルコールも回り、看護師としての矜持を熱く語ってみたり恋愛トークをしたりと大いに盛り上がったのだった。

「未依ちゃんは明日休みなんだっけ?」
「はい」
「ってことは、律先生とクリスマスデート?」
「その予定です。ふたりで過ごすのは初めてなので、ちょっと浮かれてます」
「ふふっ。楽しんできてね」

職員用入口であかりと手を振って別れ、未依はいつもとは違う方向へと足を向ける。今日は真っすぐに自宅に帰らず、予約したクリスマスケーキを取りに寄る予定だ。

パティスリー『bonappetit』はベルギー南西部にあるワロン地方に本店を持つチョコレート専門店。少し価格は高いけれど美味しいと有名で、律とふたりきりで迎える初めてのクリスマスのため奮発したのだ。