「たしかに私は律くんについて渡米しなかった。五年前はそんな覚悟もなかったから。それについては言い訳しない。でも、私は六歳の頃から二十年以上律くんが好きなの。子供の頃から律くんだけを想ってた。それだけじゃなくて、今はお医者さんとしての律くんも尊敬してる。だから病院で騒いで彼の邪魔をするのは許せないし、そんなことをするケイトさんには絶対律くんを渡せない」
未依の思いを聞き、胸が熱くなる。今すぐにでも抱きしめたい気持ちをなんとか堪え、律は通訳に徹した。
未依に反論されたケイトは、真っ赤な顔で唇を噛み締めている。
『これでわかっただろう。俺たち夫婦の間に他人が入り込む余地はない。デイビス先生の言う通り、女子修道院でその自分勝手で思い込みの激しい性格を矯正した方がいい』
『嫌よ! 私は――』
『もういい。今のケイトにはなにを言っても通じないようだからね』
まだ続きそうなケイトの自己弁護を遮ったオリバーは、未依に被害届はどうするかと尋ねる。
それを通訳すると、彼女はブンブンと勢いよく首を横に振った。律としては警察に突き出してやりたかったが、意外にもオリバーがしっかりとケイトの処遇を決めていると知ったので、未依の意見を尊重してやることができそうだ。
『妻は警察沙汰にはしたくないようなので、この場で収めます。俺だって、尊敬するあなたを相手にこれ以上やり合いたくはないですから。ただ、ケイトが二度と俺たちの前に表れないようにお願いします』
『もちろんだ、金輪際かかわらせないようにする。僕も孫を犯罪者にはしたくないからね。しっかりと更生させるよ』



