なりふり構わず警備員の拘束を解き、ケイトは未依を指さしながら睨みつける。すると、これまで英語でのやり取りだったため蚊帳の外になっていた未依が口を開いた。
「律くん、ケイトさんはなんて言ってるの?」
「聞かなくていい。ただの逆ギレだ」
「お願い、ちゃんと教えて。知らないままでいたくない」
真顔で懇願されたため、律は仕方なくこれまでのやり取りを要約して聞かせた。
「ケイトさんはケイトさんなりに、律くんを本気で好きだったんだね」
「……どうだか。単に靡かなかったのが気に入らなかっただけな気もするけどな」
たとえ真剣な思いだとしても律が既婚者であることは変わらず、常識をわきまえないアプローチをするなど論外だ。
「律くん、ケイトさんに伝えて」
律ではなく、真っすぐにケイトを見据えて未依は言った。



