離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


オリバーの言う女子修道院とは、アメリカのセレブの間では知らぬ者はいない施設だ。表向きはマナーや社交のプロトコールをを学ぶフィニッシングスクールでアメリカ唯一の全寮制。しかしとにかく厳しい規律が有名で、親が『このままでは、いずれ取り返しのつかないラブルを起こしかねない』と判断した我が子を預け、外界から隔離された環境で簡素な生活を送らせて、傲慢な性格を矯正させるという。

スマホの持ち込みはできず、インターネットも繋がらない。電話すらなく、外部との接触は手紙のみ。当然、SNSもモデルの仕事も辞めるしかない。

修道院の噂を知っているのだろう、ケイトは目を見開いて抗議した。

『嫌よ! どうして私がそんな場所に行かないといけないの!』
『僕は言ったはずだよ。今回の来日で問題を起こせば、君の身の振り方を考えると。そもそも僕について来ること自体反対だったんだ。律に迷惑をかけるんじゃないかと心配していたからね』
『だって律が欲しかったのよ。今まで望んだものはすべて手に入ったもの。お祖父様だって律が私と結婚したら嬉しいって言ってたじゃない』

この期に及んでまだ言い訳を繰り返すケイトだが、オリバーは淡々と言葉を返す。

『それについては僕にも非がある。妻がいる身の律に、そんな話をすべきではなかった。でも君は引き際を知らなすぎる。それどころか律の奥さんに暴力を振るうなんて、もってのほかだ。警察に引き渡されても文句は言えないんだよ』
『だって……だってその女が悪いんじゃない! 五年よ! 五年も会わずにいられるなんて、律のことを愛していない証拠じゃない! 私の方が律のことを想ってるもの!』