律から婚姻届を渡された。用意周到で冷静な彼を見て、未依は嫌でも認識させられた。

これは、恋愛感情からのプロポーズではないと。

結婚は、家族になるための手段なだけ。家族を失った未依に同情して、放っておけない彼の優しさ。律はただ、あの日の約束を守ろうとしてくれているのだ。

未依だって、それがわからないほど子供ではない。

高校を卒業してからも須藤の家で一緒に暮らしてはいたものの、ふたりの間に男女の関係はない。幼なじみで、今では一緒に暮らす兄妹のようなもの。

なにより、律は未依を恋愛対象として見られないとハッキリ言っていたのだ。

それなのにプロポーズに頷いてしまった。

須藤の家に身を寄せているとはいえ、養子縁組をしたわけではないため、戸籍上の家族はひとりもいない。

けれど、結婚となれば別だ。律と入籍すれば、法律の上で未依はひとりぼっちではなくなる。その安心感に縋りたくなってしまったのだ。