けれど、ようやく渡せる今は、少しだけ気分が晴れたような気がする。

やっと、彼を解放できるのだから。

未依は「はい、これ」と、なんでもないように手にしたクリアファイルを差し出した。しぶとく胸を刺す痛みは、一切無視をして。

「疲れてるだろうから単刀直入に言うね。今まで本当にありがとう。これにパパッとサインしてくれる?」

未依の手元を見て、ポーカーフェイスだった彼の表情が驚愕に染まる。

律の視線の先にあるのは、妻の欄が記入済みの離婚届。誰かに強制されたわけではない。未依がすべて自分の意思で用意したものだ。

「律くん。私たち、離婚しよう」

未依は、曇りのない笑顔でそう告げた。