まるで悪びれたところのないケイトを目の当たりにして、オリバーは落胆のため息をつく。
『そうか、それすらもわからないような大人に育ってしまったんだね。僕が甘やかして育ててしまったせいだ。キャシーになんと謝ったらいいんだろう』
キャシーとはオリバーの亡くなった娘の名だ。多忙な彼は、ケイトに何不自由ない生活ができるよう何人ものシッターやハウスキーパーを置き、快適な環境を整えた。祖父が孫を甘やかすという構図は、日本もアメリカも変わらないらしい。
その結果、とんでもなくワガママに育ってしまったのだ。オリバーが世界中から称賛される優秀な医師だったのも、ケイトを増長させる一因となったのだから皮肉なものだ。
『帰国前の約束を覚えていますか?』
『……ああ。もし今後、ケイトが律に迷惑をかけるようなことがあれば、強制的に近づけないような措置を取ると。それについて、僕もずっと考えていたんだ』
『なに、一体なんの話をしてるの……?』
話についていけないケイトは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
『ケイト。君にはカリフォルニアにある女子修道院へ行ってもらう。そこには社会的マナーや礼儀を学べるプログラムがある。もっと謙虚に、自己を見つめ直すいい機会になるはずだ』



