『お祖父様!』
突然現れた祖父に驚くケイトを一瞥したあと、オリバーは律に向き直る。そして隣にいる未依の赤くなった頬に気づき、頭を下げた。
『迷惑をかけて悪かった。奥さんにも、僕の孫娘が大変申し訳ないことをした』
これに慌てたのは、事の次第を飲み込めていない未依だった。
「りっ、律くん? まさか、この方って……」
「ケイトの祖父だ」
「オリバー・デイビス先生でしょ! 神の手を持つ天才脳外科医の! 頭をあげてください! 律くん、通訳して! 頭上げてもらって!」
恐縮しきりな未依に免じて、オリバーには向かいの椅子を勧めた。こうして向かい合って座るのは、彼の最終カンファレンスの時以来だ。
彼は術後の合併症もなく、退院後は医師として仕事に復帰している。とはいえ、以前よりも勤務時間を大幅に減らし、無理のない範囲で働いているらしい。今後は後進の育成や講演に力を入れていくと、帰国前に聞いていた。
『どうしてお祖父様が謝るの?』



