離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


(甘やかされて育った弊害か、本人の資質か。まぁ、どちらもだろうな)

律はなんとか冷静になろうと大きく息を吐き出し、最後通告とばかりにケイトと視線を合わせた。

『デイビス先生の手術を担当したのは俺しか助けられないと思ったからであって、誰に頼まれなくとも執刀した。そこに他意はない。それから、俺が愛したことのある女性は妻である未依だけだ。他の女は道端の石ころと変わらない。何度も言っているが、俺はケイトに微塵も興味がない』

一言一句、ケイトの脳裏に刻みつけるようにゆっくり話す。ようやく少しは通じたのか、ケイトの頬に朱が走った。

『そんな……っ、だって、初めて一緒に食事をした時、私に見惚れていたでしょう? 綺麗だって褒めてくれたわ!』
『初対面の時に君が十八歳だと聞いて、見た目から受ける印象とのギャップに多少驚いただけだ。綺麗だなんて褒めた記憶はない』
『でも、律は私のSNSだってチェックしてたもの! 私に興味があったってことでしょう?』
『親切な同僚から、君のSNSに俺の写真が上がっていたと教えてもらったんだ。削除するように忠告したあと、きちんと消えているか確認はしたが、それ以降は見てない』

そうした応酬を何度かするうちに、ケイトの目にはじわりと涙が滲んできた。それが自分の思い通りにならない悔し涙なのか、あるいは別の感情があるのか、律にはわからないが、正直どうだっていい。