離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


実年齢だけでなく、未依を子供っぽいとわめくケイトの方があきらかに子供だ。

あと数十分も経たないうちに彼女を引き取りに来るはずだが、それまでこの癇癪に付き合わなければならないと思うとうんざりする。

『話にならない。迎えが来るまで大人しくしててくれ』

しかし、ケイトは一向に引き下がらない。

『お祖父様の手術だって、私が助けてってお願いしたから引き受けてくれたんでしょう? みんな言ってたわ、神の手と呼ばれるお祖父様の手術を引き受けて万が一があったら医者生命が絶たれてしまうって。だから引き受けられないって。それでも律が手術をしてくれたのは、バツイチになる律が私との仲を認めてもらうためなんじゃないかって』

渡米中に在籍していたケリー・クリニックには、世界中から医師が集まっている。中には選民思想や出世欲の強い人間もいて、患者を選ぶ医師がいたのも事実だ。

オリバーに目をかけてもらっている律を気に入らない者が、『スドウはデイビス医師に取り入るために孫娘を利用している』なんて馬鹿げた風評を立てていたのは知っている。デイビスの手術の話となると一様に腰が引けていたくせに、律が執刀すると聞くと『若手が生意気だ』といきり立っていた。

ケイトはそんな彼らが流したくだらないデマさえ自分のいいように解釈して、律が自分に好意を抱いていると思い込んでいるのだ。