離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


けれど、今はそうも言っていられない。もしも事実と違う話や、未依を不快にするような噂が流れているのだとしたら、すぐにでも排除しておきたい。

じっと見据えると、未依は観念したようにもごもごと口を開いた。

「英語での会話が聞き取れなかったみたいで。患者の家族には見えなかったから、その……アメリカ時代の元カノとの修羅場だったんじゃないかって……」

眉尻を下げる未依の言葉を聞き、律のこめかみがピクリとひくついた。ケイトが病院に押しかけたことで根も葉もない噂が立ち、未依に余計な心配をさせてしまったのだ。ケイトや無責任な噂をする看護師たちも腹立たしいが、律自身の不甲斐なさにも苛立ちが募る。

すぐになにもないと説明しようとしたところに、ケイトが話に割り込んでくる。

『ちょっと! 私を無視しないでよ!』

なんとも空気の読めないタイミングに、律の苛立ちはさらに募る。

『黙ってろ。俺は未依に手をあげた君を許さないし、金輪際かかわるつもりはない』
『どうしてよ! その女より私の方が綺麗だし、女として格上じゃない。そんな子供っぽい人のどこがいいのよ。どうして律は私を選ばないの?』