「悪い、痛かったよな」
頬にそっと触れると、直前まで冷やしていたからかひんやりと冷たい。手に馴染む柔らかい肌が赤くなっているのが痛々しい。
「大丈夫だよ、もう痛みもほとんどないから。それに、どうして律くんが謝るの?」
「あの女は俺の知人で、なぜか俺に執着してるんだ」
「うん、知ってる。デイビス先生のお孫さんのケイトさん、だよね」
困ったような顔をして笑う未依を見て、律は目を見張った。
「どうして彼女を?」
「ケイトさん、三日前にも律くんに会いに病院に来たでしょ? 実は看護師たちが噂してるのを聞いて、気になって検索してみたの」
インフルエンサーとして多少名の知れている彼女を知っている看護師がいたのなら、SNSのアカウントを見つけるのは簡単だっただろう。プロフィール欄に医者の祖父がいると書いてあったため、病院に来ていたのが彼女だと気付いたらしいが、律が気になったのはそこではない。
「噂って、どんな?」
律は自分がやたらと注目を集めると自覚はあるものの、これまでは裏でなにを言われていても気にも止めなかった。



