離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


ようやく離れられて清々していたというのに、まさか日本で再び付き纏われるとは思わなかった。デイビスが日本の医師会から講演を依頼されたらしく、それに引っ付いて来日したらしい。

先日も突然この病院に来て『脳外科の須藤律を連れてきて』とスタッフステーションで騒ぎ、『離婚に頷くまで帰らない』と幼い子供のような癇癪を起こした。

その日はお目付け役でもあるケイトのマネージャーが飛んできて彼女を連れ帰ってくれたが、また来るのではと危惧し、連絡先を聞いておいたのは正解だった。

とはいえ、ケイトが未依に手を上げるのは想定外。咄嗟に反応できず、庇えなかったのは痛恨の極みだ。律は舌打ちをしてケイトを睨みつける。

『誰に向かって手を上げたか、わかってるんだろうな』
『なっ、なによ! その人が悪いんじゃない、私から律を奪おうとするから』
『ふざけるな! その常識のなさも、病院という場所で無節操に色目を使うのも、向こうではデイビス医師の孫だからと許されてきたんだろうが、ここは日本だ。誰もお前を庇いはしないし、妻に危害を加えるのなら徹底的に潰す』

律は捻り上げていたケイトの腕を振り払うように離す。すると、ケイトは後ろに二、三歩よろめきながら崩れ落ちた。

それを視界にも入れず、律はすぐさま未依を腕に抱き込んだ。

「未依、大丈夫か。すぐに冷やそう。誰か、冷却剤を。それから、警備にこの女を引き渡せ」