富美は友人夫婦の突然の死に涙しながら、夫とともに様々な手続きを未依に代わって引き受けてくれた。
本来なら、その場でお礼を告げるべきだった。けれど、そんな頭さえ回らない。
あれは、葬儀が終わり火葬場の中庭でひとり佇んでいた未依を律が探しに来てくれた時のこと。
『律くん……私、ひとりぼっちになっちゃった……』
律は、すでに涙の枯れ果てた未依をそっと抱きしめ、言ってくれた。
『大丈夫。俺が未依の家族になるから』
あの時のあたたかさを、未依は一生忘れることはないだろう。
どのくらいの時間が経っていたのかわからない。夏にもかかわらず指先まで冷え切っていた未依を、律はひたすら抱きしめ続けた。
世界にたったひとりで取り残されてしまった恐怖を、彼が和らげてくれた。
(律くん……あったかい……)
ともすれば両親のあとを追いたいとさえ思っていた未依を踏み留まらせたのは、律の体温だった。



