離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


さすがに口に出して「律くん、大好き」なんて子供っぽいことは言わなくなったが、変に視線を逸らしたり気まずく感じることもない。

恋愛対象として見てもらえなくても、幼なじみの女の子として大切にされている。それはきっと、未依の自惚れではない。

だから律を困らせないように、この恋心が自然に消化されるまでは、無理に諦めようとするのをやめたのだ。

報われない恋をしているけれど、家族仲は良好だし、学校も楽しい。未依は、平凡だけど幸せに生活していた。


そんな暮らしが一変したのは、高校三年生の頃。両親が交通事故で突然この世を去った。

ふたりは駆け落ち同然で結婚したらしく、祖父母と呼べる存在はいない。十八歳で天涯孤独になってしまった未依は絶望した。

大好きだった両親がもうこの世にいないなんて信じられず、どうしたらいいのかわからない。

それでもやるべきことは山のようにあり、悲しみが癒えるのを待っていてはくれない。人生のどん底にいるにもかかわらず、葬儀の手配、保険や相続に関する手続きなどが、ひとり娘の未依にのしかかる。

両親を亡くしたばかりの女子高生に、そんな煩雑なことを考える余裕はない。呆然と立ち竦むしかなかった未依に手を差し伸べてくれたのが須藤家の面々だった。