離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「ごめん、変なこと言って。忘れて――」
「慣れてないし、未依が初めてだ。さっきも話しただろ、髪を乾かしてやりたいなんて思えるほど親密になった女はいない」
「そ……っか」

納得したのか、未依は俯いたまま黙り込む。過去を気にするのは、嫉妬しているからだろうか。

ちらりと覗く耳がうっすら赤く染まっていて、それを見た瞬間に身体の奥からじわじわと劣情がせり上がってくる。

すぐにでも目の前の華奢な身体を抱きしめたい。後ろから強く抱きしめ、赤く染まった耳を食み、その身体に律の愛を一晩中刻みつけたい。

けれど、それは未依が律と同じ気持ちになってくれるまではお預けだ。

(少しは、俺を男として意識してくれているんだろうか)

告白してくれた時の未依は、まだ中学を卒業したばかりだった。

あれから十年以上が経っている。今の未依には、あの頃寄せてくれたような想いはないだろう。一度失った恋心を取り戻すのは、きっと容易ではない。

それでも、律に未依を諦めるという選択肢はなかった。