離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「座って」

こちらの意図を汲み取った未依は、あからさまに動揺している。照れているように見えるのは、先ほど気持ちを告白したおかげだろうか。

「えっ? いやいや、そんなことしてもらわなくても……」
「いいから来い」

強引に座らせると、ドライヤーの風を当てながら手ぐしで髪を梳いていく。初めは遠慮を見せていた未依だが、どうやら気に入ってくれたらしい。

「ふふ、気持ちい。律くん、上手だね」
「髪を乾かすのに上手いも下手もないだろ」
「そう? 髪を引っ張られる感じもないし、サラサラになってるよ。どうしてこんなに……」

上機嫌に話していた未依が、不自然に言葉を止めた。

「どうした?」
「え? ううん、すごく上手だから、こういうの慣れてるのかなって思って……」

声が小さく聞こえにくかったため彼女の言葉の意味を掴み損ねたが、すぐに『女性の髪を乾かし慣れている』と思われたのだと思い至った。