離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


ここを選んだ理由は病院に近いというのも嘘ではないが、一番はセキュリティの高さが気に入った。職業柄どうしても不在がちになるため、未依と住むのなら万全を期さなくてはならない。

室内のインテリアや、彼女のために整えた部屋を見て、ようやく律の想いを実感してくれたらしい。幼い頃から一緒に過ごしていたため、未依の好みは把握している。室内の家具はすべて彼女の喜ぶ顔が見たくて手配したものばかりだ。

自分でも、どうかしていると思う。

昔から、未依しか見えない。気付いたら彼女が大切で、愛おしくて、守りたい存在だった。

それなのに五年近くも離れなくてはならなかったのは地獄のようだったし、気持ちを伝えずにいたせいで離婚を切り出されるなど、自分が情けなさ過ぎて笑えない。

どうにか自分の思いを伝えたくて、ここぞとばかりにこれまでの経緯や未依に対する気持ちを曝け出すと、離婚しないという言質こそ取れなかったが、彼女は顔を真っ赤にして『ちゃんと、考える』と言ってくれた。

それだけでも、問答無用で離婚届を突きつけられた当初から考えれば、一歩前進したはずだ。

「……問題は、寝室か」

律は、何度目かもわからないため息をついた。