離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


(それにしても、自宅に入って洗い物をしたり郵便物を開けるなんて気味が悪いな。未依を怖がらせるなんて、絶対に許せない)

夕食はデリバリーで簡単に済ませ、未依に先に風呂を使うよう促した。

律は飲み終わったコーヒーカップをシンクで洗い終えると、ソファに座り大きく息を吐く。

未依がひとり暮らしをするマンションに侵入された痕跡があると聞いたのは、たった数時間前。弟の櫂からのメッセージがきっかけだった。

【未依が千咲に愚痴りに来てる。仕事が終わったなら、とっとと引き取りに来てくれ】

櫂は愛する女性を手に入れた今、とても幸せそうだ。律の渡米中は未依の様子を知らせてくれていたが、家族の時間を邪魔されるのは不満なのだろう。

仕事を終えて折り返すと、彼女は少し前に櫂のマンションを出たと言う。

『夫婦の問題はそっちで勝手にやってくれ』と笑いと呆れを滲ませた櫂の声に、律は「悪い」とだけ言って電話を切った。そしてすぐに未依に電話したところで、彼女の異変に気がついたのだ。

『へ、部屋に⋯⋯誰かが、入ってる気がする⋯⋯。洗い物が、どうしよう、鍵閉め忘れたみたいで⋯⋯』