『大丈夫。俺が未依の家族になるから』
それは自然と口から出た言葉で、心の底からの本音だった。
両親を巻き込んで根回しし、実家で一緒に暮らせるように手配して、悲しみに暮れる未依が少しでも元気になれるようにできる限りそばにいた。
当初は高校に復学できるかもあやしいほどの憔悴ぶりだったけれど、徐々に本来の明るさを取り戻し、本命の大学にもきちんと合格した時には律も安堵した。
本来なら大学合格と同時に未依を口説き、すぐにでも本当の意味で家族になりたかったが、律の両親、特に母親から釘を刺されていたため叶わない。
未依は大学生、律は研修医としての新生活が始まったこともあり、まずは生活基盤を整えようと切り替えて仕事に励むことにしたのだ。
未依以外に固執するほど興味を持てるものはなかったけれど、医学生時代に脳神経科と出会ったことで医師としてのステップアップに繋がった。
脳は思考、感情、行動を司る中枢器官であるにもかかわらず、そのメカニズムはいまだ解明されていない部分が多い。



