自分はどこかおかしいのかもしれない。これほどまで一人の女性にしか興味も愛情も持てないのだから。
けれど、律はそんな自分が嫌ではなかった。
可愛いと感じるのも、守りたいと庇護欲が湧くのも、愛おしいと自然と頬が緩むのも、未依に対してだけ。それならば、律がとる行動はひとつ。
もう一度、未依に好きになってもらえるように努力するだけだ。
そう決意した矢先、悲劇が起きる。
未依の両親が突然の交通事故で帰らぬ人となり、親戚のいない未依はたったひとりこの世に残されてしまったのだ。
葬儀のあとの未依の表情は、十年近く経った今も律の脳裏に焼き付いている。
『律くん……私、ひとりぼっちになっちゃった……』
うつろな瞳にはなにも映っておらず、すでに枯れ果てたのか涙も出ない。血の気が引いた青白い顔でひとり火葬場の中庭に佇む未依は、そのまま両親の元へといってしまいそうな儚い雰囲気を醸していた。
律は咄嗟に彼女を抱きしめ、なんとかこの世界に引き留めようとした。



