離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


ひとりっ子の未依は律を兄のように慕ってくれていたし、てらいもなく『律くん、大好き』と口にする。

純粋で素直な彼女にあてられて、うっかりすると『俺もだよ』と口をつきそうになり、適当に『はいはい』とあしらう日々。成長にともない一緒に過ごす時間は減っていき、律が高校に上がる頃には、家族みんなでの食事会の時に顔を合わせる程度になっていた。

そんな中、ある出来事が起こり、律の中で未依の存在が大きく膨れ上がることになる。

『あのね、私、律くんが好きなの。律くんは、私を恋愛対象として見てくれる?』

青天の霹靂だった。

未依の『大好き』は兄に対する家族愛のようなものであると思っていた。まさか恋愛感情を向けられているとは、少しも想像していなかったのだ。

当時から、律は恐ろしくモテた。

整った容姿と将来有望だとみなされる医学部生という肩書きは、それだけで女性を惹きつける。

用もないのに大学へ出向いては律の気を引こうとアピールを繰り返し、周囲を牽制し合いながら近づいてくる彼女たちに、律はうんざりしていた。

そもそも恋愛に対する興味を持ち合わせておらず、年相応の性的な欲求も薄い。