『初めまして。俺は律。こっちは弟の櫂』
『私は未依だよ。律くん、櫂くん、いっしょに遊ぼ!』
キラキラした笑顔でこちらを見つめる小さな未依は、天使のように可愛い。これまでなにものにも心を揺さぶられたことのなかった律は、未依に出会い衝撃を受けた。
年下の女の子の面倒を見るなんて面倒だと思っていたけれど、そんな考えはすぐに霧散した。
こんなにも可愛くて、守りたくて、愛おしいと思う感情が自分の中にあったことも、その対象が六つも年下の女の子であることにも驚いた。
恋愛感情ではなかったと思う。自分とも、弟の櫂とも違う、小さくて華奢でか弱い生き物。律たちを追いかけて転んでは泣き、おやつを食べればケロッと笑い、別れ際になると寂しいと泣く。
感情がわかりやすく表に出る素直な未依が眩しくて、見ているだけで心が和んだ。
けれど、六つも離れている女の子となにをして遊んだらいいのかわからない。嬉しそうにあとをついてくる未依を可愛いと思いつつ、なぜかぶっきらぼうな対応ばかりしていた。
当時は自覚がなかったけれど、照れくさかったのだと今ならわかる。



