「…ねえ、篠原さん。」
ホームルームも終わってみんな帰ったあと。日直の日誌を書いているとき、名を呼ばれて私、篠原かんなはシャーペンを置いた。
「どうかした?」
顔を上げると、言葉を発したのはクラスメイトの木崎だった。まあ、今日の日直のもう片方は木崎だから、当然なのだが。
「その…」
夕日が差して茜色に染まった教室。放課後に男女2人きり。こころなしか木崎の頬も赤いような…。
これはアレか。ピンときた。
なるほどなるほどと思いながら続く言葉を待つ。
「…篠原さんってかわいい、よね…」
顔を背けてもじもじしながら言う木崎。
「そうだね。」
「そうだね?!」
真顔で言うと木崎は驚いたように私の言葉を繰り返した。さっきの態度とはまるで違う。自分で言ったのに何をそんなに驚いているのか。
私はさっきの言葉の続きを言う。
「たしかに私のひまりはかわいい。すごく。でも、ひまりの連絡先は教えないからね。」
圧をかけるようにじっと見るが、目の前の当人はポカンとしている。
「ひまり…って、B組の?妹さん?」
急な名前呼び捨てに顔をしかめつつ答える。
「そうだけど。」
私たちの間に流れる沈黙…。何か閃いたような木崎の言葉を遮って私はピシャリと言った。
「待って待って違「やっぱりひまりってかわいいよね!でもそんなかわいいかわいい双子の妹のひまりに変な男からたくさん連絡とか来たら困っちゃうだろうから、ひまりが好きなら諦めてね。」
絶句と言ってもいい表情。疲れたようだがまた木崎は続ける。
「違うって。俺が…か、かわいいって言ったのは篠原ひまりさんのことじゃ…」
「ひまりがかわいくないって?!」
聞き捨てならない。うちのひまりは宇宙一かわいいが?
ギロリと睨むとまた疲れたように言う
「そういうことじゃなくてぇ…」
あ、疲れたようにじゃなくてほんとに疲れてる。なんか分かんないけどちょっとかわいそうかも…。でも、仕方がない。
私は椅子を引いて立ち上がる。
「じゃ、そういうことだから。」
「待って。」
帰ろうとすると手をつかまれた。
「何?私は今から愛するひまりに会いに帰るんだけど。」
冷たい返事に怯んだのか手が離される。
「えっと、その…ひまりさん?は連絡無理ってことは、篠原さん…えと、you?かんなさん?は大丈夫ってこと?!」
木崎が最後の方はもうヤケクソみたいな感じで言った。顔を赤らめつつ目を潤ませて。youが軽くツボに入りそうになっていた私はその顔を見てかたまった。
「うっ。」
私、こういう泣き落としみたいなの弱いんだよな。
めんどくさいし…
「いいけど。ひまりに手出さないなら。」
私がそう言うと、木崎はパっと笑顔を見せてスマホを出してきた。…繋がった。
でも、私と連絡繋がってどうするんだろ。
考え込んでいると、一つひらめいた。
「わかったよ。」
「え?何が?」
「君は最初からこれが狙いだったのね?」
またパッと顔を赤らめ頷く木崎。
「だから俺がかわいいって言っ「じゃあ、よろしくね!同じひまりファンとして!」
木崎が口を開くのを見ていなかった私は次は無意識に木崎の言葉を遮ってしまった。やっちゃったと思って見ると目の前にはポカンと口を開けた木崎。
まあいいか。そんなことより早く帰ってひまりに会いたい。
「じゃーねーまた明日〜!」
「ちょ、待ってちがう」
木崎の最後の言葉はもう走り出していた私には聞こえなかった。
私が消えた教室で、木崎がガックリ肩を落としていたことは、もちろん私が知るはずない。
ホームルームも終わってみんな帰ったあと。日直の日誌を書いているとき、名を呼ばれて私、篠原かんなはシャーペンを置いた。
「どうかした?」
顔を上げると、言葉を発したのはクラスメイトの木崎だった。まあ、今日の日直のもう片方は木崎だから、当然なのだが。
「その…」
夕日が差して茜色に染まった教室。放課後に男女2人きり。こころなしか木崎の頬も赤いような…。
これはアレか。ピンときた。
なるほどなるほどと思いながら続く言葉を待つ。
「…篠原さんってかわいい、よね…」
顔を背けてもじもじしながら言う木崎。
「そうだね。」
「そうだね?!」
真顔で言うと木崎は驚いたように私の言葉を繰り返した。さっきの態度とはまるで違う。自分で言ったのに何をそんなに驚いているのか。
私はさっきの言葉の続きを言う。
「たしかに私のひまりはかわいい。すごく。でも、ひまりの連絡先は教えないからね。」
圧をかけるようにじっと見るが、目の前の当人はポカンとしている。
「ひまり…って、B組の?妹さん?」
急な名前呼び捨てに顔をしかめつつ答える。
「そうだけど。」
私たちの間に流れる沈黙…。何か閃いたような木崎の言葉を遮って私はピシャリと言った。
「待って待って違「やっぱりひまりってかわいいよね!でもそんなかわいいかわいい双子の妹のひまりに変な男からたくさん連絡とか来たら困っちゃうだろうから、ひまりが好きなら諦めてね。」
絶句と言ってもいい表情。疲れたようだがまた木崎は続ける。
「違うって。俺が…か、かわいいって言ったのは篠原ひまりさんのことじゃ…」
「ひまりがかわいくないって?!」
聞き捨てならない。うちのひまりは宇宙一かわいいが?
ギロリと睨むとまた疲れたように言う
「そういうことじゃなくてぇ…」
あ、疲れたようにじゃなくてほんとに疲れてる。なんか分かんないけどちょっとかわいそうかも…。でも、仕方がない。
私は椅子を引いて立ち上がる。
「じゃ、そういうことだから。」
「待って。」
帰ろうとすると手をつかまれた。
「何?私は今から愛するひまりに会いに帰るんだけど。」
冷たい返事に怯んだのか手が離される。
「えっと、その…ひまりさん?は連絡無理ってことは、篠原さん…えと、you?かんなさん?は大丈夫ってこと?!」
木崎が最後の方はもうヤケクソみたいな感じで言った。顔を赤らめつつ目を潤ませて。youが軽くツボに入りそうになっていた私はその顔を見てかたまった。
「うっ。」
私、こういう泣き落としみたいなの弱いんだよな。
めんどくさいし…
「いいけど。ひまりに手出さないなら。」
私がそう言うと、木崎はパっと笑顔を見せてスマホを出してきた。…繋がった。
でも、私と連絡繋がってどうするんだろ。
考え込んでいると、一つひらめいた。
「わかったよ。」
「え?何が?」
「君は最初からこれが狙いだったのね?」
またパッと顔を赤らめ頷く木崎。
「だから俺がかわいいって言っ「じゃあ、よろしくね!同じひまりファンとして!」
木崎が口を開くのを見ていなかった私は次は無意識に木崎の言葉を遮ってしまった。やっちゃったと思って見ると目の前にはポカンと口を開けた木崎。
まあいいか。そんなことより早く帰ってひまりに会いたい。
「じゃーねーまた明日〜!」
「ちょ、待ってちがう」
木崎の最後の言葉はもう走り出していた私には聞こえなかった。
私が消えた教室で、木崎がガックリ肩を落としていたことは、もちろん私が知るはずない。
