「どうして……」
 ぼつりと疑問の言葉が、繰り返し出た。

 王太子殿下に恋をしているわけではなかった。しかし幼い頃より、この方が将来の私の旦那様となるのだと思うと、必死になって歩み寄る努力をした。
 その甲斐あって、幼い頃は比較的仲が良かったはずだ。

 信頼関係も築けたと思っていたのに……。

 馬車に揺られながら、そんな事を考えていた時、突然馬車が加速を始めた。

 
「え!? どうしたのです!?」
 御者に尋ねるも返事がなく、不審に思った私は馬車の窓を開けて外を見る。
 外はいつの間にか森の中を走っており、御者の姿も見えない。
 馬車はそのまま猛スピードで走っており、止まる気配を見せない。
 凄いスピードのまま馬がカーブを走り抜け、その反動で馬車が大きな木にぶつかった。
 馬車が大破して外に放り出される事になった私は、目の前が崖になっている事に気づいた。

 落ちる────

 そう思ったと同時に崖に放り出され……。
 私は死んだ。