そんな中、何故私がマリーナを虐める必要がある?
 時間に追われて屋敷に帰る暇さえない私が、どうしてマリーナを虐める事が出来るの!?

 マリーナとライアン様の仲がいいのは昔からだ。
 私の母が亡くなってから、父はマリーナの母と再婚した。父は私には見せない優しい表情で母娘に接していた。特に父は、天真爛漫なマリーナを可愛がるようになり、マリーナの願い事はよく聞いていたと思う。

そんなマリーナが、ライアン様との婚約者同士のお茶会にもついて来るようになり、父と義母に、マリーナを止めてほしいとお願いしたが、全く聞いてくれなかった。
 
その頃からだろうか。マリーナがお茶会について来る事がいつの間にか当たり前のようになり、ライアン様もマリーナと会話することの方が多くなっていったのは……。
 特に最近は距離感が近い様子で、私が帰っていなくても、ライアン様は屋敷を訪問していたとも聞いていた。けれど、そんなふたりの関係も結婚すれば収まると思っていたのに。
  王宮の中で、あのような強行に及んだのなら、きっと陛下や父の許可を取った上なのだろう。
 ならば、誰かの助けなどない。
 家族の中で、私だけが家族ではなかった。義母に表立っていじめられはしなかったが、私という存在は無視されていたし、マリーナは私から色んなものを奪っていった。
 父は、そんな私を見ても、何の反応も示さなかった。父の中では私は娘ではなかったのだろうか……。
 そして婚約者まで私から奪っていく──。