私の呟きは誰の耳にも届かない。
 こうして私は、有無を言わせず、質素で立て付けの悪い小さな馬車に無理やり乗せられた。

 つい先程、沙汰を下されたばかりなのに、すでに馬車が準備されている。
 この件はライアン様の計画的なものだったのだろう。すでに決定事項として、私の意見など、はなから聞く気はなかったのだ。

 仮にも公爵令嬢であり、幼い頃から長きに渡り王太子妃教育を受けてきた。
 学園にあがってからは、王太子殿下の執務まで、いつの間にか私に振り分けられるようになり、自分の執務や王妃教育に加えて王太子殿下の執務までこなしていく。ほぼ一日が執務に費やされ、学園などに通う余裕などなく、屋敷にもほとんど戻れていない。
 王宮内に宛てがわれた私専用の部屋で、寝泊まりする毎日を送っていた。そしてようやく、あと一ヶ月で王妃教育も終了となり、学園の卒業と共に結婚まで決まっていたのに……。