前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

 数年ぶりに会って話す祖父との会話は楽しくて。
 何年も会っていないとは信じられないくらいに、すんなりと打ち解けて話す事が出来ていた。
 そうして祖父との会話を楽しんでいると、中からロットマイン医師の診察終了の声が聞こえた。
 母の部屋の中に入った私と祖父は、母の元に駆け寄る。
 
「先生、母の具合はどうでしたか?」
 私の質問に、ロットマイン医師が答えてくれた。
 
「後天的な気管支喘息のようだね。呼吸する管が狭まることによって、呼吸困難を起こす病気だ。
 辺境伯地の、綺麗な空気の中で育ってきたから、王都の雑多な空気には合わなかったのかもしれないね。
 原因はそれだけではないにしても、治療を怠ると死に至る事もある怖い病気だから、ちゃんと治療しないといけないね」
 
 なんですって?
 気の病とか、全然違うじゃないの!
 ちゃんとした治療を受けていなかったから、前の人生では母が亡くなってしまったのかと思うと、今更ながらに自分の不甲斐なさに腹が立った。
 
 前の人生でも、少しの勇気と行動で、母を助けられたかも知れない。
 
 そう思うと、今のこの人生において、絶対に母を死なせないと心に誓う。
 
「先生! 治療はどのようにすれば?
 わたくしにできる事はありますか!?」
 
 必死になってそう聞いた私に、ロットマイン医師は優しく答えてくれた。
 
「君はとても素晴らしい令嬢だね。聞いたよ。君の薦めで、この部屋の換気をこまめに行なっていると。食事も食べやすく、栄養価の高い物を摂れるように工夫してもらうようにしたとね。あとは適度な運動で体力をつけて、規則正しい生活を送る事。もちろん、喘息の誘発になりそうな、ほこりやチリなどを除去するように、清掃は怠らないこと。あとは薬物療法で経過を診ていけば、元気になる可能性は高いよ」
 
 医師であるロットマイン伯爵には、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 治療法が分かれば何とかなる。
 
「ルーシー、ありがとう。貴女がわたくしを心配して、お父様に手紙を出してくれたそうね」
 
 お母様はそう言って、両手を広げながら私を手招きする。
 私は、皆が見ている前で母に抱きつくのが恥ずかしくなり、ついモジモジしてしまう。
「恥ずかしがる事ないわい、ほれ、母が呼んでいるぞ」
 お祖父様がそう言って背中を押してくれた勢いで、私は母の胸に飛び込んだ。

「お母様、ちゃんと病名が分かって良かったです。治療して早く元気になって下さいませね」
 
 お母様に抱きついてそう話す私を、祖父やロットマイン医師親子が微笑ましそうに見ていた。