前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

 なんと、お祖父様は隣国の医学界の権威を あまりの事に感極まって、泣きそうになるのを必死で抑えながら挨拶をする。
 
「遠路はるばる、ようこそお越し頂きました。ルーシー・ヘルツェビナと申します。本日は我が母の為にお越し頂けた事、誠に有難く思います。どうぞ母をよろしくお願い致します」
 
 心を込めてそう挨拶をした私に、ケイン様もにっこりと笑顔で挨拶をし返してくれる。
 
「ケイン・ロットマインです。父に付いて医学の勉強をしています。本日は父と共に、貴女の母上を診察させていただきます事をご了承ください」
 
 ケイン様がそう伝えてくれた後、お祖父様が母への診察を、父に改めて申し出る。
 
「ヘンリー殿。もちろん公爵家にはお抱えの医師がいる事も承知の上だ。貴殿に不満を訴えている訳では無い。
しかし、シエンナの病状が一向に良くならないのが気になって仕方ないのだ。親バカだと笑ってくれていい。医学界の権威である、ロットマイン伯爵に診てもらえるこの機会を逃したくない。診察してもらってもいいだろうか?」
 
 このような祖父の申し出に、父は断る術は無い。 
「どうぞ。妻の部屋にご案内致します」
 そう言って父は、メイドに母の部屋の案内を申し付けた。
 
 先ずはメイドと私が母の部屋に入り、私が母に事情を説明して、承諾を得てから、祖父とロットマイン伯爵とケイン様を部屋に招き入れた。
 そして診察中は一旦祖父と私は部屋を出て、診察結果をすぐに聞けるように廊下で待っていた。
 
「ルーシー、すまなかったな。一人で不安に思っておったのだろう。もっと気にかけておればよかったわ。不甲斐ない祖父で許してくれ」
 
 廊下で待っている間に、祖父がそう言って頭を下げて私に謝ってくる。
 私は慌ててお祖父様に頭を上げてくれるように伝えて言った。
 
「謝らないで下さいませ! 辺境伯の地を守っていらっしゃるお祖父様がお忙しいのは、よく理解しております! それなのに、わたくしの手紙にお心を砕いて下さったこと、とても感謝しているのですよ」
 私が必死でそう言うと、祖父は優しく私の頭を撫でて下さる。
 
「いい子に育ったな、ルーシー。数年ぶりに会ったら随分と大人になったものだ」
「お祖父様から教えて頂いた絵は、今も続けているのですよ。母の部屋にもわたくしが描いた花の絵が飾ってあるのです。後で見てくださいますか?」
「もちろんだとも。楽しみだな」