前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

 まぁ、父が確認しているようだし、王宮からお迎えが来るまでは、当たり障りがない程度に相手をしておかないとね。
 
「そうですね。あ、今運ばれたお茶菓子、最近売り出されたばかりのムースのケーキなのですよ。口当たりが滑らかでとても美味しいのです。ぜひご賞味下さいませ」
 
 取り敢えず、子供には美味しいお菓子を与えておこうという、安易な気持ちで薦めてみる。
 実際、ライアン様は甘党だ。
 きっと、このムースケーキが気に入るだろう。
 このムースケーキも前の人生で知った食べ物だ。もう数年先には、王都中で大人気となるケーキ屋なので、つい最近、店ごと買い取った。
 ここの店長であるパティシエは、お菓子作りの腕はピカイチだが、経営者には不向きで赤字経営だったのだ。
 前の人生では、それを知った別の貴族が、ここの店を買い取ってから、莫大な利益を得たのを私は知っている。
 なので、父にもうすぐ8歳になる誕生日プレゼントとして、私名義で買い上げてもらった。
 このケーキ屋はとても小さな店舗で、細々と経営を行なっている。しかも今は赤字経営。
 しかし数年後には、何店舗も支店を出すくらいに人気のある店になるのだ。
 もちろん経営は、前の人生で学んだ知識があるので、お手の物だ。
 前世で培った知識を有効に使いながら、蓄えはしっかりとしておかないとね。
 
「美味いな、これ。気に入ったぞ。次はこれを持って城に来い」
 
 上機嫌で食べながらそう話す殿下に、次などありません、と心の中で返事をしながら、笑顔で答える。
 
「お気に召して頂けて嬉しいですわ。まだ有りますので、お土産としてお包み致しますわね」
 
 にっこりと笑ってそう返事した頃に、ようやく王宮からのお迎えが到着した。