ルーデンベルグ王国の王宮の広間。
 私は婚約者であるライアン・ルーデンベルグ王太子殿下から、鋭い視線を浴びていた。

「ルーシー・ヘルツェビナ!! お前との婚約は破棄だ! お前のような悪辣な女が王太子妃、ひいては王妃になるなど、この国の損失にしかならない! 私はここにいる心優しいマリーナ嬢を婚約者とする!  そしてお前は、この未来の王妃であるマリーナに対する様々な嫌がらせや、破落戸を雇ってマリーナを襲わせようとした罪により、娼館送りとする!」

「お待ちください! わたくしは義妹であるマリーナにそのような事をした覚えはありません!」

「うるさい!  周りからの情報は得ている! マリーナからも全て聞いているのだ! 言い逃れをしようとしても無駄だ! 衛兵! この女を連れて行け!」

 ライアン様の叫びで、広間に待機していた衛兵たちがすぐさま私を拘束するために駆け寄ってくる。

「ライアン様! わたくしの話を聞いてくださいませ!」

 衛兵たちに拘束され、引きずられながらも必死にそう叫ぶ私の声は、ライアン様に届かない。
 ライアン様の隣で、ライアン様にしがみつきながら震えていたマリーナと視線が交わった。
 信じられない思いでマリーナを見つめる私を、マリーナは勝ち誇った顔をして見ているが、残念ながらその表情はライアン様からは見えない。

「何故……?」