〇前話と同じ
心音「私は、います。最近ですけど。」※朝比奈のことを思い出して顔を赤らめる
和田先輩「うわ!惜しかったか!いいな。心音ちゃんに好かれる子は!」
心音(惜しかったってもしかして私のこと好きなのかな?いや、でも多分同じ能力を持ってる親近感だろう。そう思い込みたい。もう朝比奈君で手一杯だから。)
和田先輩「どんな子なの?!」
心音(先輩も恋バナ好きか!)
心音「まあ、かっこよくて、他の子より大切にされてる気がするけど、……でも長年片思いしてる子がいるんですって。」※最後のほうが泣きそうになりながら小声になる。
和田先輩「そっか。辛かったな。」※横にきて背中を撫でてくれる。
和田先輩「でもこの様子だと心音ちゃんのこと好きそうだけど。」
そこでハッとした。また読まれた!!
和田先輩「あ、ごめん。気づいたら読んでた。」
少し文句を言いたいが仕方ない。
心音(この能力は強く思うと少し触れただけで思いが流れ込んでくるから今回は私のせいだ。)
和田先輩「じゃあ、いろいろ話せたし、帰ろうか!」
心音(結局何だったんだ?)※店を出た。

〇駅外、放課後
和田先輩「家まで送ろうか?」
私は時計をちらっと見る。まだそんなに遅くないから大丈夫だろう。
心音「いいえ、大丈夫です。ではまた。」
先輩と手を振りあって歩き出す。バス停に着くと携帯を開く。
心音(あ、朝比奈君からメッセージ来てた。内容は、)
アプリを開いて文字を読む。
朝比奈『明日少し話がある。朝、十時に駅で集合で。行きたい場所があるから一日空けておいてほしい。大丈夫かな?』
明日は土曜日。予定もなかったから『分かった!』と返事をする。
心音(話って何だろう。もしかして、好きな人と付き合えたとかそういう報告?それは苦しすぎる。でも違う可能性もある。)
携帯を閉じて空を見る。
心音(ああ、朝比奈君と両想いになりたかった。迷惑だろうけど好きです。ごめんなさい。)
私の頬には生ぬるい水が静かにゆっくり伝っていた。

〇駅、朝
心音「眠い。」※目をこすりながら歩く
昨日は朝比奈君のことを考えないようにしてるのに、考えていた。笑顔や体温や匂いを思い出したり。そのせいで寝れなかった。そのおかげか、準備はばっちりで(心以外)服もメイクも髪型も今までで一番かわいくできた。でもそんなことしてもいい話かどうかは分からないのに。涙でぐしゃぐしゃになるかもしれないのに。
朝比奈「おはよう。」
心音「おはよう。」
心音(相変わらず眩しいなー。でもどこか緊張気味?)
朝比奈「じゃあ、電車に乗ろうか。」
週末で人が多い中はぐれないように朝比奈君の後をおう。

〇電車内
朝比奈「なんか眠そうだね。寝れなかった?」
心音「うん、少しね。」
朝比奈「そっか。ごめんね。緊張させて。
    ……でもこれは俺の覚悟の話だから。」※最後は聞こえなかった。
〇数分後
カクっと寝そうになっている心音
朝比奈「俺の肩に頭のせて。」
優しい朝比奈君の心地よい声に限界だった私は頭を預ける。

〇数十分後
朝比奈「小鳥遊さん。小鳥遊さん!」
ハッと目が覚めると周りの乗客はだいぶ減っていた。そして私は朝比奈君に体重をかけて寝ていたようだ。
心音「あ、ご、ごめんね。重かったよね?」
朝比奈「大丈夫だよ。そろそろ着くから降りる準備しよう。」
駅の名前を見ると聞いたことのない場所だった。

〇海へ向かう途中
朝比奈「大丈夫?まだ眠い?」
目が覚めたばかりでボーっとしてる。
朝比奈「手、つなぐ?」
その一言でハッとなる。「大丈夫だよ。」そう言おうとして止まる。もしかしたらこれが最後かもしれない。朝比奈君も、好きな人にも申し訳ないけど頷いて差し伸ばされた手を握る。
心音「どこへ行くの?」
朝比奈「内緒。ところで、昨日の放課後って何してたの?」
目を見ると嫉妬でいっぱいのようだ。

〇サイコメトリー中
昨日の放課後、心音と和田がカフェで話してるのを見てる映像が流れる。

〇現在に戻る
心音「昨日、見てたの?」
思わず言ってしまうと、当たり前のように戸惑っている。
朝比奈「……気づいてたの?」
心音「いや、あの、えっと」
間が空く。
心音「なんとなく……?」
怖いけど顔を見る。朝比奈君は意外と気にしてないようだ。
朝比奈「そっか。小鳥遊さんには嘘つけないんだね。」
嬉しそうにつないだ手をぶんぶんと振る。

〇海
心音「綺麗!」
着いた場所は景色がきれいで人の少ない海だった。今日は天気もいいし綺麗!
朝比奈「話があるけど先に聞きたい?それとも少し楽しむ?」
心音「先に聞きたい。」
心音(逆に頭がその話がよぎって楽しめないから聞こう。)
朝比奈「じゃあ、話すね。きっとこれは叶わないし、小鳥遊さんも困ると思う。」
朝比奈君は目を見て、ずっとつないでた手を離して海のほうを見る。
朝比奈「ずっと見てたんだ。みんなは上辺しか見ないところを優しい目で違う視点で見てくれたり。
色々理由はある。でもこれだけは言える。
    

     俺は……!」