〇前話と同じ
心音「え、いいの?」
心音(てっきり今日はもう一緒にいられないかと思ってた。)
透「ああ。今、家族いないし。」※気づくと透は手を離している。心を読まれたくないから。
透「こっち。」

〇透の部屋
透「こっち入って。」
心音「お邪魔します。」
モデルルームのような綺麗な家だと思ったら、案内された透君の部屋も整理整頓されていた。
透「飲み物持ってくるから。待って。お茶でいい?」
心音「はい!お願いします。」
透君は一階へ降りて行った。あたりをきょろきょろ見渡すと机の上には、少し前に私が透君からの好意が勘違いかもと泣いたときにもらった雑貨屋さんの片割れのキーホルダー。こんなに大事にしてくれてたんだ。
透「これでいいかな?って、何見てんの。」
心音「うーん?これ、大事にしてくれてたんだ!って嬉しくて。」※透は話を聞きながらテーブルに飲み物を置く
透「大事にしてるよ。これも、心音も。」
透君は後ろに回ってきて抱きしめてくる。
心音「これで少しは落ち着ける?」
透「……とっても。」

〇数分後
透「好きだよ。大好き。もう離したくない。だからこそ怖いんだ。」「※心音は透の震えた手を握る。
透「知りたいだろうから説明するね。事の発端は幸せからだったんだ。」

〇透の回想、数年前
俺には相田という大親友がいた。相田は俺の外見を見ることはなかったし、常に一緒にいて、一生一緒にいると思ってた。そんなある日、
相田「聞いて!」
透「おう。どうした。」
相田「俺さ!彼女できた!」
その相手は相田が長年、片思いしていた幸田という女だった。幸田から何度か熱い目線を感じたのは相田を見ていたのか。引っかかったのを何とか無視していた。

相田「透!これ見て!かわいいよな!」
相田「透!これ!もらったんだ!」
そんな微笑ましい二人を最初は嬉しく眺めていた。
相田「透!今日、彼女の誕生日でさ!何あげよう!」
透「こんなに好かれてるなら何あげてもいいんじゃない?」
相田「本気で悩んでるんだよ!一緒に考えてよ!」
そんな時俺は一生後悔する決断をしてしまった。
本人にこっそり聞こう。
という案だった。

幸田「透君!どうしたの?突然呼び出して!」
手紙をこっそり下駄箱に入れ、何とか呼び出した幸田はなんとなく嫌な雰囲気を持っていた。俺はとにかく目的だけ聞いて離れよう。そう思っていた。
透「……もうすぐ、誕生日だろ?何か欲しいものとかない?」
聞いた瞬間嫌な予感は当たった。いつも見てくれだけで近づいてくる女達と全く同じ反応をした。
幸田「え!?透君くれるの!?嬉しいなー!」
透「俺じゃな」※途中で止まる
幸田「じゃあ、」
顔が近づいてきた瞬間、振り払う前に扉が開く。
相田「……は?透?」
透「相田!」
しまった!とんでもないタイミングで見られてしまった。
透「これは。ちが」※途中で遮る
相田「どういうことだよ!この写真を見たから来たのに!」
その写真には俺が幸田を呼び出した時の写真で、
幸田『助けて!全然知らない人から来たんだけど、怖くて行くことにした。だから見に来てほしい!』
と書いてあった。
相田「なあ、俺が喜んでたのを笑ってたのか?
   どうなんだよ!」
相田は半分泣いて、半分怒って近寄ってくる。ドンっと思いっきり突き飛ばされる。
相田「もう。お前とは、

   絶交だ。」

〇現在に戻る
透「相田には絶交されて、もちろん幸田とも離れたけど、まさかまだ近づいてくるとは。」
話している間も何度も震えていた。
心音「そっか。それは確かに。」
心音(私はそんなに酷い事してあんなに優しい顔をして近づいてきた幸田さんに絶句してしまう。女も怖いな。)
少しの間、私は何を言ったらいいか、透君はトラウマから喋れないわ。で無言が続く。
心音「怖かったのに話してくれてありがとう。私は離れないから。」
透「でも俺、最初から結構、心音のこと縛ってたよね。本当にごめんな。」
心音「気にしないで。最初も嫌じゃなかったよ。」
透「でも最初、嫌がってたよな?」
心音「え、いや、あれは、……目立ちたくなくて。
   あ、透君が嫌なんじゃなくて、
   ただでさえ、サイコメトリーという能力があるのに、これ以上目立つのは面倒くさくて。」
透「そっか。」
心音(顔は見えないけど声色が少し元気になった?かな。)
透「好きだよ。ずっとそばにいて。」
透君の声はだいぶ普段の甘い声に戻って来た。
心音「私も好き。だから、……みんなに恋人ですって発表するのは待って。」
透君がずっと言いたそうにしていたため私はちゃんと分かってるよ。と安心させる。
透「分かってる。大丈夫だよ。だってこれから先ずっと一緒にいるんだから、今焦ってギクシャクしてもしょうがないでしょ?」
心音「そうだね。ねえ、透君
   大好きだよ。」※夕日が当たる中、心音はニヤニヤして、透は軽く口角を上げる。

今日は心の声聞かずに透君を感じたいなと思っていたら珍しく思いが通じて、静かな中2人の心地いい心臓の音が響いた。
テーブルの上にある、ぬいぐるみのキーホルダーがこの間と同じく光っているけど、この間と違って嬉し涙に見えた。
END