ライブが終わり、莉深とご飯を食べてから、2人で余韻に浸りながらホテルのエレベーターに乗っていた。莉深がサプライズで上から2番目のフロアの一部屋を借りていてくれていた。
 ワクワクしながら、エレベーターに乗り扉を閉めようとすると、黒いパーカーにメガネとマスクをしてコンビニの袋を持った人が駆け込み乗車してきた。
 無事に乗れるとその人は私たちの方を振り返りマスクをとって


 「すみません、駆け込み乗車して!!」


 と言ってきたが、私は驚いて声がでなかった。なぜなら駆け込み乗車をしたのが私の推しの風磨だったからだ。
 私が驚いている間に莉深が風磨に話しかけた。


 「あっ、全然気にしないでください!!失礼ですが風磨さんですよね?私たち今日のライブ以前列で見ていて、隣のこの子なんて、デビュー当時から風磨さんのことが好きなんです!!」


 と、莉深がはなす。


 「ずっと推してます…!大好きです!応援してます!!」


 と自然に口から出た言葉に自分でも驚く。
 風磨は一瞬、目を見開いた。


 「え…本当に?」


 すこし戸惑った様子ながらも、優しく微笑む。


 「…ありがとう。嬉しいよ」


 言葉は短くても、その温かさが私の胸に直接届く。
 ドキドキと安心が入り混じり、体中に小さな震えが走った。
 私は恥ずかしさを押し殺し、でも目を逸らさずに彼をを見つめる。
 その瞬間ライブで感じた熱気や高揚感が現実の温度として胸に残ったままでどうやって自分の部屋に戻ったのか覚えていなかった。