君の雪は解けない

はは、と心にもない笑いを零した琉佳は、その漆黒の髪をさらさらと揺らした。

やはり次期会長、というべきか。
どんな仕草一つにも威厳が溢れて止まらない。

世の中の若を狙う輩は、よくこんな恐ろしい人を襲おうと考えれたものだ、と眞雪は肩をすくめた。

だが、主がどれほど強かろうとその身に傷の一つも付けることは許されない。
そのためのボディガード、そのための眞雪だ。

彼の染み一つない、傷一つない陶器の様に綺麗な体は、大量の屍の上に成り立っている。


「眞雪、彗には俺から話を通しておく。あれも喧嘩は強い。いざとなったら呼べ」


琉佳の薄い唇が形成する‟(すい)”とは、有瀬のこと。

有瀬は若頭側近の補佐で、武力を専門とはしていないものの身体能力が異常に高く、戦場に駆り出されることもしばしばだ。

そして、これは眞雪くらいしか知らないことだが、
数年前から二人は肉体関係を持っている。