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絢爛とした主の部屋に、眞雪は普段通りに跪いた。
金の装飾が施された、これまた豪華な椅子に腰かける黎月会若頭——冷泉 琉佳が、眞雪の仕える主であった。
「——若。軌然会と争うことになりそうです」
そうか、と威厳たっぷりに呟いた彼は、
名前こそ可愛らしいものの、時期会長として育てられてきたのもあり凛々しく精悍な青年である。
眞雪は守護対象の彼より4歳年下だったが、幼少期からボディガードとして勤めてきてそれなりに重宝されているし、相応の実績も叩き出しているから、周りの大人もとやかくは言えない。
そして、眞雪を信頼している琉佳にだからこそ、白蓮のことを話すのはひどく億劫だった。
「若のことですから、私が近頃懇意にしている組織はご存じですよね?」
「勿論だ。暴走族⋯とやらだったか。子供の戯言に付き合うのも程々にしろ」
「それは承知の上ですが、その暴走族が軌然に狙われています」
「⋯⋯眞雪。軌然はお前の居場所を嗅ぎつけたらしいな」
「その様ですね」

