君の雪は解けない

だがそんなことを言えるはずもなく、曖昧に言葉を濁した。

仕方がないことだ。
自分が極道に携わる者であることは知られてはならないのだから。

自分は普通の人間に、擬態せねばならないのだから。


「ふうん。まあ、まゆくんめちゃくちゃ強いもんね!」

「気のせいだよ。頭でも打った?」


何も知らない花名森のはずだが、
何故か‟用事”が武力関係であることは察したらしい。

束の間、その場に普段の和やかな雰囲気が戻ってくる。

その様子に眞雪はふ、と微笑み、倉庫から去ろうと一歩踏み出した。


だが、すぐにふと足を止め振り返る。


「そうそう。犯人の件は、僕が調べておくね」


そんなことができるのか、とでも言いたげな白蓮の表情に、
眞雪は再び苦笑を零した。

彼らは、感情が顔に表れすぎている。

自分の感情に素直なことは結構だが、
いつか悪い輩に騙されそうだと常々感じるほど。

眞雪は久方ぶりに愉快な気分になり、今度こそ倉庫を後にした。