君の雪は解けない

「これで5件目なんて⋯⋯」

「もう、偶然では片づけられないね」

「複数人で行動させているのにな」


苦々し気な伊吹の言葉は、
白蓮を襲う人物が自分たちを遥かに上回る人物であることを示唆しているようだった。


「⋯⋯⋯まさか、また」


裏切り者が居たりして。

誰も口に出すことはなかったけれど、
全員が同じように感じているのは明らかだった。


「ごめん、僕帰るね」

「あ、なんか用事でもあったか?」


眞雪は口の端をゆるりとあげて、かぶりを振る。

が、何かを思い直したかように天井を見上げ、もう一度伊吹を見据えた。


「ちょっと急用。僕しか頼めないんだって」


‟僕しか頼めない用”。
それはもちろん、眞雪の仕える若頭を狙う輩の始末。