君の雪は解けない

間違いなく重い話であろう。

面倒なことになりそうだという思いとは裏腹に、
心の底から沸き上がる好奇心も、確かに存在していたのだ。

伊吹は刹那、幹部や姫と目配せをする。

そうして一歩前に出てきたのは、副総長の若那。

何故総長が話をしない、という気持ちも確かにあったけれど、
今はそれよりも‟裏切り者”の話への興味が勝っていた。


「話せば、長くなるかもしれませんよ」

「いいよ。どれだけ長くなっても、気にしない」


ここに来てまだ焦らそうとする若那に、眞雪はため息を吐きそうになる。

が、若那はその薄い唇をもう一度、今度はゆっくりと、開いた。


「あれは⋯⋯それほど昔のことではありません」


話は、その言葉から始まった。