君の雪は解けない

普段なら、彼が伊吹の問いかけに応えないことなど、ありえない。
それだけに、その場の全員がよっぽどのことであると容易に想像できた。

と、八百坂の薄い唇が何かを形どる。


「み、ふゆ」


⋯⋯人名?

聞き覚えのない単語に首を傾げた眞雪だったが、
対照的に、白蓮の他の面々は八百坂と同じように凍り付いて動かない。

特に伊吹はあからさまに顔を背けた。


「⋯そいつの名は、口にするな。若那」

「でも、」


亡くなったって。

ぽつりと呟いた八百坂は、
愛用のノートパソコンを凝視していた。


「⋯⋯え、で、でも、あんなやつ、」

「あいつが、弱かった。それだけだろう」