風間、というのはきっと担任の教師のことだと、伊吹の視線を辿って理解する。
(あれ⋯でも、授業は座って聞くもの、と若に教わったけれど)
この男は当たり前かの様に立っているし、あろうことか教室を出ようとしている。
若が嘘を吐くなんてありえない。
ということは、⋯⋯この男が普通とは違うのか。
だが、風間と呼ばれた教師もそれを止める様子は見られない。
(⋯⋯妙なクラスに入れられたな。極力関わらないように、気を付けなければ)
きゅ、と気が引き締まり、舐めていたお気に入りの棒付きキャンディが、舌の上で転がる。
若にどういう目的があって、眞雪に命令したのか。
それは分からない。分からない、が———
(ここで面倒事が起きると厄介なのは、間違いない)
この生活が出来るだけ平穏なものになることを、切に願った。

