君の雪は解けない

凶器で脅す、なんてことは、目の前の人間には通じない。
それを先の出来事でよく理解したのだろう。


「⋯⋯こ、こ、ここ、」

「こ?」

「殺さないで、ください⋯ッ!!」


本当に、先程までの威勢はどこへ行ったのやら。

特に横柄な態度が目立っていた総長らしき人物が、地に頭を擦りつける。


「君たちが、白蓮を潰さないでくれたらいいのだけれど?」

「し、しっ、しません、しません⋯⋯お願いしますッ!!!」

「うん。じゃあ今日は終わり。またね」


微笑まれた総長は再び体を震わせ、逃げるようにして倉庫から出て行った。

あの様子からすれば、相手を窮地に追い込むレベルまで行くかと思われた眞雪だったが、
案外からっと相手を家に帰した。

本当に白蓮の危機を守れたらそれでよかったらしい。

下っ端たちは、ピンチを救ってくれたことを深く感謝した。
⋯⋯彼は軽く受け流していたのだが。