君の雪は解けない


「なに?二ノ宮(にのみや) 伊吹(いぶき)くん」


机に貼ってある名札をとんとん、と指の腹で叩き、
嫌味なくらいににっこりと笑うとその男⋯⋯伊吹(いぶき)は分かりやすく顔を(しか)めた。

奇麗な顔だけれど大したことないな、と眞雪は鼻で嗤う。


「お前、⋯⋯⋯ちょっと、来いよ」


本当に初対面、だというのに。

彼のあまりの失礼のなさに、眞雪は大きく息を吐きそうになった。


「今?授業中でしょう」

「はあ?」


子供をあやすように返事をすれば、
伊吹の眉間に寄った皺が徐々に深くなっていく。

チッ、と苛立たしく舌打ちした彼は、そのままにガタンと席を立つ。


風間(かざま)、授業抜けるわ」