君の雪は解けない

「有瀬、またね」


ドアの方へ向かいながら、有瀬との通話を切る。

がちゃ、と音を立てて開けると、
そこには赤い髪と大量のピアスを特徴とする人間が居た。


「あっ、ああああの」

「⋯⋯なに?」


あまりにも緊張しすぎているその声に、
眞雪は、何だこの人は、とでも言わんばかりに眉を顰めた。

その人は、意を決したかのように深呼吸をした。


「下で、しっ、親睦を、深めませんか⋯!!」


下、というのはきっと倉庫の1階のことだ。

つまりこの人は下っ端で、眞雪と仲を深めたいらしい。


面倒な申し出。

だが、暇に暇を重ねたような今、断る方が野暮というものだ。