君の雪は解けない

有瀬が気に入るような女性なら自分も気に入るかも、と想像を巡らせるものの、
実際に会ったことがないのでそこはなんとも言えない点である。


『そうそう。よく知っているね』

「とっても有名な話だよ。あの有瀬が惚れているだとかね」


尤も眞雪は、有瀬が真に惚れている相手を知っているので、それは誤情報だとすぐに分かるのだが。


『あの子に聞かれたらどうしてくれるの?』

「有瀬が困るね?その際若とのこと言っても良いんじゃない」

『あはは、俺にそんな勇気ないよ』

「情でも移った?有瀬」

『そんなわけないでしょ』

「なら、よかった。是非そのモモに会わせてね」


分かったよ、と有瀬が電話越しで笑んだとき、
ふと幹部室のドアが3回、ノックされる。

向こうからは、眞雪さーん、なんて自分を呼ぶ声がする。

なにか用事でもあるのだろうか、と眞雪は重い腰を浮かせた。