君の雪は解けない


それも無理はない、と彼を見て思う。

薄く細められた白藍の瞳。
光を反射し艶めく色付いた唇。
筋の通った鼻に、柔らかく弧を描く眉。

繊細なガラス細工のような、
触れたら壊れてしまいそうな儚さ。

長い睫毛が肌に影を落として作る、どこか中性的な、浮世離れした艶めかしさ。

そして絹糸の様に繊細で柔らかい白金の髪は、
ゆるくセンターパートにされており、受けるのは隅まで洗練された印象。

生気がない白い頬のせいで、目の前の人物だけ精巧に作られた置物のようだ。

なんとなく柔らかい雰囲気もそうだが、
その佇まいからすると加えて気だるげ、儚いといった単語まで浮かぶ。


彼が伊吹の前の席に腰掛けると、とろんと甘やかな香りが辺りに漂った。

(こいつの、か?)

うっかりしていると引き込まれてしまいそうだ。

ふと仲間の方を見ると、またも伊吹と同じことを思ったようで、横目でちらちらと彼を見ていた。