君の雪は解けない

[伊吹Side]






あまりにも突然だった。


「鳳 眞雪です」


それはまるで秋にやってきた嵐のよう。

最初は顔すら見る気も起きなかった。
どうせ白蓮を聞きつけてやって来た人間なのだろう、と高を括っていた。


——だが。

最初の印象は、静かにさざめく波のように凪いで、それでいて澄んだ声。
癖が強い、というわけでは無いが、妙に印象に残る声だった。

ほんの少し興味を惹かれ、窓側にやっていた視線をふと黒板の方へと投げやる。


「⋯⋯!」


その瞬間、ごく、と自分の喉仏が上下するのが分かった。

美しい。
伊吹の頭をその3文字ばかりが埋め尽くす。

一瞬の時が何秒にも感じられ、ふと仲間の方を見やると伊吹と同じように呆気に取られていた。