君の雪は解けない


と、急に花名森がずいっと顔を近づけてくる。
前々から思ってはいたが、彼は距離感が近いタイプであった。


「やっぱまゆくんて、すっごい綺麗」


目と鼻の先、今にも唇が触れ合ってしまいそうなその距離。

人に綺麗だなんだとか、そういう彼こそ柔らかい端正な顔立ちをしている。
決して人に言えたことではない。


「やっぱり、れんれんの方がいいの?」

「あったり前でしょ!呼んでくれるの?!」

「遠慮しておくね」


わはは、なんて豪快に笑う天堂はいつも通り、通常運転だ。

(——いつまで、この平和が続くんだろう)


それは誰にも、知る由もなかった。