君の雪は解けない

（なにか⋯見抜かれている？）

眞雪には秘密がある。
伊吹のその質問はそれを知っているからこそのものか、単なる好奇心か。

どちらにせよ、誤魔化す以外の選択肢はない。


「そう？中学生のとき、荒れていた時期があったからかも」


もちろん、そんな過去は持ち合わせていない。
所詮単なる誤魔化しの成功率をあげるための細工に過ぎなかった。

けれど伊吹は、それを真面目に受け取ったのか、神妙な表情を浮かべている。


「⋯⋯そうか、辛いことを聞いてすまない」

「大丈夫、いつか教えてあげるよ」


一体どんなものを想像したのかは知らないが、
伊吹の様子は、全てを知っている眞雪からしてみれば至極滑稽で愉快なものに違いなかった。

眞雪は声のトーンを伊吹に合わせるも、
ついその愉快さに、笑いが漏れてしまいそうになる。


「⋯ところで、だ。眞雪」