君の雪は解けない


(この子とも全く話してないけれど⋯⋯)

大人しそうなのは分かるが、とその内気さを感じさせる佇まいから思う。


「⋯⋯め、いちゃん?」


記憶の中にある名前を、無理やり引っ張り出してくる。

もし間違っていたら恥ずかしいことこの上無い。

けれど⋯⋯⋯
(⋯よかった。合っていたみたいだ)


「⋯あ、えっと⋯なんですか」


ハッと気づいたように首を傾げた彼女は、よく見るととても奇麗な容姿をしていた。

全体的に色素が薄く、目は透き通るように茶色い。
ピンクコーラルに色付いた血色のいい唇が今は愛想良く弧を描いている。

そして、腰まである長い胡桃色はゆるく巻かれており、所謂「美少女」というやつなのだと思う。


「いや、僕がいきなり入って良かったのかな、と。ほら、あまり話したことがなかったでしょ?」